先日、お客様のHPリニューアル案件を通して新しい音楽に出逢うことが出来ました。ドビュッシーの月の光という曲です。お客様からのご要望の中に、サイトを閲覧した時にその曲を再生したいというものがあり、サイトに実装した時に初めて耳にしました。それがまた極めて美しい曲で、心の中のどこかと共鳴しているような感情に変えてくれるのです。曲を聴いて僕に見えてきた景色は、夜の月の光ではなく、昼間の病室でした。
天井が高い病室で、初夏の暖かい晴天の日に、病室の窓からそよ風と一緒に日差しが入っている。空は雲ひとつない青空。部屋の階は1階ではなく2階。地面から力強く伸びている桜の木の枝が窓を覗き、風になびく木の葉が太陽をキラキラさせて、この世に生まれてきた喜びを感じると同時に、完治しない病との闘病に嫌気が差しているようなジレンマが。午前中に見舞いに来た家族と友人も去り、昼食も終えた13時頃、孤独に静寂を感じている。このまま生きていけるのだろうか。今のなす美しいひと時と裏腹に、生死をさまよう苦しみの発作がいつ来てもおかしくない。希望はあるように見えるが、心底救いの手はないことは分かっている。だから全てを手放すしかない。一瞬一瞬が創りだす美しさを、初めて感じられた午後だったのです。
そんな感じの景色でしょうか。もちろん僕が体験したものではありません。ドビュッシーの月の光を聴くと、そんな感じのイメージが浮かび上がってくるだけです。中学か高校で見た、アルジャーノンに花束を、というドラマのストーリーの葛藤に、少し似ている感じがします。しかし月の光というタイトルなのに、全くもって夜のイメージが浮かび上がりません。不思議です。いつかまたピアノを手に入れたら、一番に弾きたい曲だと思いました。美しすぎる。さすがクラシック。
2015/2/6